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高強度を実現する曲げ木技法

 1、木のしなやかさを受け継ぐ「曲げ木」

「曲げ木」とは、熱や水蒸気または薬品などで木材線維を軟化させ曲げる技術です。
 
 その利点のひとつは、木材を削り出して形を作る「削り出し」に比べて、材料の大きさを大幅に小さくすることができる点です。貴重な木材資源を大幅に節約することができます。
 
 そしてもう一つの利点が「木材線維を断ち切らない」という点です。右の画像のように、真っ直ぐな棒を半円形に曲げていても、木材線維は半円状に沿っているので、粘り強くしなやかなままです。
 
対して「削り出し」では、木材線維は短く寸断され、わずかな力で折れてしまいます。
 

 
真っ直ぐな木の丸棒を半円形に曲げ木加工施した画像
 
 
携帯靴べら掌の曲げ木を行う前の素材と、曲げた後の素材を並べている画像
 

2、当工房オリジナル
「三次元曲げ」

長年の「曲げ木」の研究を経て編み出したのが、化学薬品などは一切使わず、高温の水蒸気だけで3D形状に曲げる「三次元曲げ」です。

これは、曲げる方向が異なるふたつの曲げ木を同時に行う技で、高温水蒸気により木材が軟化している間に、オリジナルの治具を使い手作業で曲げていきます。
 
その作業に許された時間はわずか「60秒」、極めて高い集中力が必要な曲げ木技法の最高難度です。なにしろ曲げる相手は、あの強靭な「コクタン」です。
 

 3、形を変えて高強度

自動車のボディやボンネットは、わずか「1ミリ程度」の薄い鉄板で出来ています。しかし立体的にプレスを施すと、曲げた形そのものが強い構造に変化し、プレス前のただの鉄板に比べて数倍の力に耐えることができます。
 
この靴べらも立体的な形状に曲げることで、強度の大幅アップを実現しています。
 

フォルクスワーゲンの立体的なボンネットの画像
 
 
曲げ木により靴べら掌の内側が圧縮されていることをしました画像
 

4、木を曲げる
=木を圧縮する

木を曲げる技術は、木材を「伸ばさず圧縮する」というのが基本原理で、木材線維を一切伸ばすことなく、ひたすら圧縮しながら曲げていきます。つまり曲げ木加工を施した木材の内側は「密度」が増大しているのです。
 
この靴べらも同様で、ヘラの内側は圧縮され、ただでさえ硬質な黒檀の表面はさらに硬化しており、極めて高い「耐傷性」を獲得しています。