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「冶具づくり」から始まる「モノづくり」

「 治具」=美しい靴べら製作のために

 私のモノづくりは「手作業」や「汎用の木工機」による、いわゆるアナログの仕事です。

「手作業」おける職人の手と眼は、自由自在に動く良き道具ではありますが、体調や加齢により少々狂います。「汎用の木工機」の基本は、電気モーターで回転軸を廻しているだけですので、そのままでは複雑な加工を施すことは出来ません。
 
自分のイメージ通りの美しい靴べらを製作するためには、ほとんどの製品で「冶具:ジグ」という道具を作り、正確な加工と複雑な加工を施す必要があります。
 

 
ジグを組み立てている画像
とても重要な「冶具」は、設計から部品作りまで全て自分たちで行います。
 
 
 
 
ジグの拡大画像

携帯靴べら「掌Shou」の外形を削る二つの冶具を、向かい合わせにして撮影しました。
撮影用に作ったものではなく、実際に現場で使用しているものです。余計な装飾は一切なく、とてもシンプルな外観ですが、加工部材を確実に受け止める構造、作り出す形状の正確さ、各部品の組付け精度など、複雑な要素を考慮しながら慎重に作り上げていきます。
 

ジグを使っての作業風景
 
 
 
たくさんのジグを並べた画像

画像は、携帯靴べら「掌 Shou」を製作するために自作した冶具の一部を並べたものです。(実際にはお見せできない冶具がこれと同じくらいあります...)
バラツキのない美しい製品を製作するためには、実に多くの冶具を製作する必要があります。それは当工房だけでなく、手工業に携わる多くの職人さんも同様なのです。
 

「治具づくり」は私のモノづくりの原点。

 
私が修行させていただいた「クラフトハウスヤスマ」には、師匠が作った冶具が棚いっぱいに並んでいました。
安全性、再現性、作業性も抜群で、かつ美しい!その冶具を駆使することで、誰もが想像もしない加工方法を可能にしていました。
 
数年後、幸いにも師匠の作った冶具を修理する仕事を通して、冶具作りを学び、自ら作った冶具で問題を解決する喜びを知り、冶具に無限の可能性を感じました。仕上げた冶具が狙い通りに作動したその晩は、お酒が本当にうまかった...
 
 
入門から二十数年、コンピューター制御による機械加工が普及してきました。デジタルデータを直接読み込み→機械に出力→様々な角度から自動切削、が可能なので、たくさんの冶具を準備する必要はありません。製造に携わる人員を大幅に軽減し、コストダウンが実現、世界中で同じ品質のモノが作れます。すばらしい進歩です。

でも「冶具づくり」の熱狂を経験をした私、向かう先はやはりそちらではない。冶具作りに習熟すれば「昭和のアナログ機械」で何でも作り出すことができます。工夫を重ねれば生産効率が上がり、潤沢な資本が無くても「商品化」が可能です。たった一人の職人でも世界に向けて挑戦できるのも、この「冶具」のおかげ!
 
なお「冶具作り」を習得するには、たくさん「失敗」を経験しないといけません。「3日かけて作った冶具が全く役に立たず...」なんて珍しくもありません。その失敗を糧にして「さらに3日かけて成功する冶具に改良する!」のです。何度でもトライするからこそ、自分だけの解決方法が見つかり、やがてそれが「オンリーワンのモノづくり」に繋がっていくのです。

大言壮語を打ち上げてしまいましたが、とにかく「冶具作り」が楽しいのです。その「楽しい」というプラスのエネルギー、私の靴べらにしっかりと伝わっていると信じています。なぜなら、楽しく作った冶具で、楽しく靴べらを作っているから・・・
 
これからも「手作り冶具」による靴べらづくり、コツコツ続けていきます